-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
IFMニュースレター Vol.4(2021.10.19発行)
本メールは、過去に千葉大学真菌医学研究センター バイオリソース管理室(IFM)から、菌株提供を受けた方に発信している情報メールマガジンです。年に2回のペースで当センターの活動及び医真菌・微生物のトピックスをお届けします。
-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-=-
目次
[1] NBRP「病原真核微生物」第4期を振り返って
[2] 真菌センターのトピックス
[3] 注目のIFM株
[4] アゾ―ル耐性判別分析モデル検証への協力募集(菌株寄託のお願い)
[5] コラム記事の掲載
--------------------------------------------------------------------------------
[1] ナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)「病原真核微生物」第4期を振り返って
10月現在新型コロナ新規感染者数は減少傾向になります。とはいえ皆様におかれましては、いろいろな制限などありご苦労されていることと存じます。
2016年4月よりNBRP第4期が開始され、本年度が最終年度となります。第3期までは、病原細菌を担当する大阪大学、岐阜大学、病原性原虫を担当する長崎大学とともに「病原微生物」として活動してきました。しかし、今期からは「病原真核微生物」に分割し、長崎大学と協同して活動内容をより真核生物寄りに集中し、ユーザーの利便性向上に努めてきました。NBRPを軸にして、ブラジルのカンピーナス大学との共同プロジェクト、長崎大学とのケニアの共同プロジェクト等を通じ、国際的な交流(ヒトと菌株と研究と)も盛んになった5年間でした。昨年は、特に新型コロナの流行拡大の影響を受け、附属病院検査部に協力したり、P3実験室をウイルスも使えるように改築したり、海外に菌株が送れなくなったり、と大変な1年でした。それらも徐々に改善の兆しがみえます。
病原真菌・放線菌においては、抗真菌薬耐性菌など臨床上問題となる菌株、新たに真菌症の原因となった菌種などを中心に、医療機関の協力のもと年間500~800株収集し、現在までに約25,000株余りとなりました。NBRPでは「あらゆる病原真菌に対応できるコレクションづくり」を看板に掲げています。菌株カタログの内容を精査してみたところ、主要な病原体から日和見感染菌まで869種/1081種、概ね80%はカバーしていました。母数に海外の特定の地域種やそもそも培養できない種も含んでいますので、ある程度の成果が得られたという感触を持っています。また、近年では、アゾール薬耐性のAspergillusの他、テルビナフィン耐性の白癬菌を注力しています。集めた菌株は、独自に、または共同研究を通じて得た菌学的情報を付加し、データベースとして整備しています。
提供においては、昨年度はコロナ禍の影響で著しく減少しましたが、2021年度は回復をして例年並みに戻っています。平均、年間1,000株が研究、教育のために提供されていきます。
これまで、病原真菌講習会と関連学会でのブース展示、特に医真菌学会では顕微鏡スライド標本を提供するなど、真菌症の真菌の現物を見ていただける機会をもっていました。昨年から学会等はオンラインで開催されることが多くなっています。来たる12月1-3日、第44回日本分子生物学会年会(パシフィコ横浜)において、恒例のナショナルバイオリソースプロジェクト (NBRP) の展示が一部オンサイトで実施されます。病原真核微生物のブースも出展いたします。オンサイトでご参加される先生におかれましては、お立ち寄りいただければと存じます。
--------------------------------------------------------------------------------
[2] 真菌センターのトピックス
● 第4期共同利用・共同研究拠点
第3期共同利用・共同研究の期末評価の結果、当センターは「A評価」をいただきました。また、第4期の拠点の再認定の内示を受けました。
https://www.mext.go.jp/a_menu/kyoten/1385469.htm
● 当センターとブラジルのサンパウロ州立カンピーナス大学が連携して取り組んでいるAMED/JICA地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)の紹介動画が公開されました。
日本医療研究開発機構(AMED)の公式YouTubeチャンネル:
“Establishment of a Research and Reference Collaborative System for the Diagnoses of Fungal Infections including Drug-Resistant Ones both in Brazil and Japan"
https://www.youtube.com/watch?v=CdlrQrjTTSk
● 令和3年度春の叙勲にて、センター長の笹川千尋先生が瑞宝中綬章を受章されました。長年の研究・教育へのご功労が認められての受章となります。
センター教職員一同、この度の栄えあるご受章を心よりお喜び申し上げます。
● 臨床感染症分野のHazim O. Khalifa特任助教の論文が、雑誌「Journal of Fungi」のEditor's Choice Articlesに選出されました。
In Vitro Characterization of Twenty-One Antifungal Combinations against Echinocandin-Resistant and -Susceptible Candida glabrata. doi: 10.3390/jof7020108
https://www.mdpi.com/journal/jof/editors_choice
● 筑波大学の萩原 大祐 准教授(千葉大学真菌医学研究センター 客員准教授)と当センターの高橋 弘喜 准教授が実施している共同研究についてプレスリリースされました。
「植物球根がヒト病原真菌の薬剤耐性を多様化させる温床になっている可能性を確認」
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/documents/FY2021/20210902_press.pdf
● ユーザーの声を御寄せください。
紙ベースだった「IFMお客さまアンケート」もオンライン対応しました。ぜひ、皆様のご希望やご質問等をお寄せください。今後の活動方針に反映させていただきます。
https://forms.gle/b53K6krJTaKD7k9V7
--------------------------------------------------------------------------------
[3] 注目のIFM株
以下の菌株が分譲可能となりました。
・Trichophyton rubrum IFM 66695(テルビナフィン耐性株)
Kitauchi et al. Tinea corporis caused by terbinafine-resistant Trichophyton rubrum successfully treated with fosravuconazole. J Dermatol. 48(7): e329-e330, 2021.
・Purpureocillium lilacinum IFM 63780(polyhexamethylene biguanide hydrochloride耐性株)
Yamamoto et al. Isolation and characterization of the polyhexamethylene biguanide hydrochloride-resistant fungus, Purpureocillium lilacinum. Biocont Sci. 26(3): 157-166, 2021.
・(一財)発酵研究所の一般研究助成により収集した、冬虫夏草類(昆虫病原糸状菌)の仲間、Ophiocordyceps 6種、Cordyceps 4種を含む関連種50株を公開しました。特に以下は珍しい種類です。
Tolypocladium inegoense IFM 67047, 67048
Ophiocordyceps purpureostromata IFM 67034
Metarhizium rileyi IFM 67023
・「天狗の麦飯(食用とされ、藻や糸状菌等の集合体と推定されていますが、実体は不明)」から分離された真菌
Lecanicillium aphanocladii IFM 64743
Higo et al. Lecanicillium aphanocladii isolated from Tengu-no-Mugimeshi found in Mount Kurohime, Nagano Prefecture, central Japan. Microb Resour Syst. 37 (1): 1-12, 2021.
・Phaeoacremonium minimum IFM 66741
Kashiwada-Nakamura et al. Subcutaneous cystic phaeohyphomycosis caused by Phaeoacremonium minimum. J Dermatol. 48(5): e234-e235, 2021.
・Nocardia meningitis IFM 12203
An autopsy case of Nocardia meningitis in an immunocompetent patient. Medicine: Case Rep Stud Protocol. 2 (4): e0094, 2021.
--------------------------------------------------------------------------------
[4] アゾール系耐性の判別分析モデル検証への協力募集(菌株寄託のお願い)
バイオリソース室では、NBRPの基盤整備事業により、理化学研究所バイオリソース研究センター(JCM・一般微生物)と岐阜大学微生物遺伝資源保存センター(GCMR・病原細菌)と共同して、MALDI-TOF MS 微生物迅速同定用の、広範な種類の微生物の同定を可能とするレファレンス・ライブラリを構築しています。現状のライブラリでは種数や株の深みが不足している菌群を中心に、病原細菌・真菌を含め、1700株からのライブラリ(ブルカー社Microflex用MSP)になり、2022年度に公開を目指しています。
これとは別に、同法によりAspergillus fumigatusのアゾール系薬剤耐性の簡易識別ができる判別分析モデルを構築し、ベータ版になりました。こちらも広く自由に使ってもらえるよう配布したかったのですが、現実問題、特定のソフトウェア上でしか動きません。他方、IFMに保存されているアゾール耐性の菌株はほぼ全てモデル構築用に用いてしまったため、当モデルの有効性の検証のために別の系統の菌株が必要です。そこで、新しい臨床分離株を送っていただき、耐性の有無の結果をお答えするという流れで、ご協力していただける方を募集します。
【詳細】https://sites.google.com/view/bioresource-af-maldi/
--------------------------------------------------------------------------------
[5] コラム記事の掲載
真菌センターのホームページでは、タイムリーで役に立つ真菌症の話題をコラムで掲載しています。
「ウイルス感染症に合併する内臓真菌症の新たな脅威」
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/gallery/visceral_mycoses.html
「自然災害と真菌症」
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/gallery/natural_disasters.html
「COVID-19患者に合併するムーコル症について」
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/gallery/mucor.html
================================================================================
発行
千葉大学真菌医学研究センター バイオリソース室
〒260-8673 千葉市中央区亥鼻1-8-1 電話:043-226-2788
bioresource[a]ml.chiba-u.jp ([a]を@に変えてください)
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/bioresoures/
※ 配信したメールアドレスに直接返信しないでください。
※ 本メールニュースは、過去にIFM菌株・DNAの利用者、並びに病原真菌講習会と感染症研究グローバルネットワークフォーラム参加者に配信させていただいています。
※ 本メールへのご質問、配信停止されたい場合等は、バイオリソース室宛(bioresource[a]ml.chiba-u.jp)にお願いします。
※ 掲載された情報は予告なく変更する場合がございます。また、許可なく複製・無断転載することを禁じます。
================================================================================