センターについて
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センターについて

千葉大学真菌医学研究センター(MMRC:Medical Mycology Research Center)は、我が国唯一の真菌医学総合研究拠点として、基盤研究、臨床研究、共同研究、人材育成を主たる目的として活動しています。

真菌感染症は、感染症の課題の一つとして重要性は認識されていましたが、以下に述べる理由から、特に我が国では、その脅威が今後益々大きくなって行きます。我が国は、すでに65歳以上の高齢者が総人口4分の1を占める超高齢社会にあります。それに伴い、老人病、生活習慣病、高度医療等に起因する日和見感染症の増加も著しく、したがって真菌感染症は大きな社会問題となっています。一方で、若年層の人口減少に伴い、今後開発途上国から多くの移民労働者を受け入れる必要にも迫られています。同時に、アジア・アフリア・中南米との交易の依存度も益々高まり、その結果、難治性輸入真菌症や真菌食中毒をはじめとする様々な輸入感染症が新たな脅威となっています。このような背景から、本センターの果たす役割は以前にも増して重要になっています。

本センターは、2010年文部科学大臣から共同利用・共同研究拠点「真菌感染症研究拠点」に認定され、全国の大学、国公立研究機関、医療機関、企業と緊密に連携して、共同利用、共同研究、教育活動に積極的に取り組んでいます。また、2015年には同拠点としての再認定を受け、拠点活動を継続して実施しています。一方2002年より、本センターは病原微生物のバイオリソースプロジェクト(NBRP)の「病原微生物」の中核拠点として、本事業を大阪大学、長崎大学、岐阜大学と分担して行っています。本センターでは、病原真菌を中心にした国際的水準を誇る高品質で大規模なリソースを保有しています。本センターによる病原真菌株の分譲及びゲノム情報提供は、研究者コミュニティーや医療機関の研究と医療活動には不可欠なものとなっています。

本センターは、我が国の真菌医学研究を先導し、また次世代の研究者を育成する使命が求められます。本センターでは、2010年よりPI(Principal investigator)制度を導入し、7つの独立研究グループリーダによる基盤研究と臨床研究を開始しました。基礎研究では、真菌学、真菌免疫学、粘膜免疫学、バイオインフォマティクスなどを行うPIによる、学際的な次世代真菌医学の創成を目指しています。また本センターの臨床感染症グループは、本学附属病院に本邦初の「真菌症専門外来」を開設するとともに、全国の医療機関に対するさまざまなコンサルテーションを日常行い、臨床現場と全国的なネットワーク形成目指した活動を行っています。本センターでは、これらの機能をさらに強化すると同時に、次世代へつながる真菌臨床感染症研究者の育成に努力しています。

以上のように、本センターは、今後も我が国の真菌医学の発展に先導的な役割を果たす所存です。

真菌医学研究センター概要

歴史

本研究センターは、昭和21年(1946)千葉医科大学附置研究所「腐敗研究所」がその源です。終戦当時、我が国では食品腐敗と食中毒が公衆衛生上大きな問題であり、腐敗性アミン、カビ毒、抗菌剤の研究が千葉県習志野で開始されました。それ以来幾多の組織改革を経て、昭和52年にセンターは亥鼻キャンパスへ移転しました。平成9年(1997)に、千葉大学真核微生物研究センターを改組して、「真菌医学研究センター」として新たな使命を担って新生したのが本センターの始まりです。平成21年(2009)には、初めて外部よりセンター長として野本明男元東大教授を迎え、センターの研究体制を抜本的に改革して研究基盤の強化に取り組み、また外部有識者による運営協議会と外部評価制度が導入されました。平成25年(2013)にはセンター長に笹川千尋東大名誉教授(元東大医科学研究所教授)を迎えました。

共同利用・共同研究拠点事業

平成9年(1997)、真菌医学研究センターは全国共同利用施設となりました。それに伴い共同利用施設の利用が活発になり、また病原真菌研究コミュニティーへの貢献も高く評価され、平成22年(2009)文部科学省から「共同利用・共同研究拠点」として正式認定されました。これにより、真菌医学ならびに関連する感染症研究の発展を支えるためのプラットフォームが構築されました。さらに平成27年(2015)に実施された期末評価において「A」評価を受け、拠点として再認定されたため、平成28年度から新たに6年間の拠点事業を開始しています。

ナショナルバイオリソース事業

我が国を含め世界各国では生物多様性条約締約国会議(通称COP)を通じて、自国の生物資源確保を国家戦略として位置づけ、このなかで病原微生物も例外ではありませんでした。文部科学省はその意義をいち早く認識して、平成14年(2002年)にナショナルバイオリソースプロジェクト(NBRP)をスタートさせました。本センターは、NBRPの中で「病原微生物」の中核的拠点に選ばれ、長崎大学、岐阜大学、大阪大学と共同してNBRPを推進してきました。本センターは、この事業で病原真菌・病原放線菌リソースを担当しています。NBRPの事業では、今後増加が予想される高度病原性を有する輸入真菌症原因菌および薬剤耐性等で問題となる新興・再興真菌症原因菌などの対策へも、その資源を活用する努力を行っています。また世界最高水準のリソースとして、ゲノム情報、薬剤耐性情報、臨床情報等の整備をさらに強化します。

研究活動

本センターは平成21年、全体を4分野で構成する一大部門制を導入しました。4分野とは「病原機能分野」、「感染免疫分野」、「臨床感染症分野」、「微生物資源分野」です。加えて、微生物資源分野へ「バイオリソース管理室」を設置し、NBRP事業の機能も強化しました。また同時に、PI(Principle Investigator)制度を導入して、PIの研究の自主性と責任体制を明確にしました。さらに腸管免疫、バイオインフォマティク、臨床感染症など幅広い分野の研究者をPIとして迎え、新たな真菌学の創成を目指しています。さらに平成28年度には、民間企業からのサポートにより「RNA感染治療学分野」を設置し、平成28年4月現在、客員及び兼任教員によるプロジェクトを含めると6分野で15研究プロジェクトが活動を行っています。

大学院教育

本センターは、大学院生の研究現場での教育に最も力を注いでいます。それは本センターが次世代の真菌医学研究者の育成という重要な使命を担っているからです。また、本センターでは、真菌医学にとらわれず、各PIが特異とする専門性を広く活かして、生命医科学全般における大学院生の研究・教育にも力を注いでいます。さらに国外からの若手研究者、大学院生を受け入れ、研究の国際交流を促進するとともに、帰国後も研究指導を継続し、共同研究成果を論文として発表してきました。本センターでは、教職員が一丸となって、積極的に若手研究者・大学院生の研究・教育及び就職活動を支援しています。

グローバル研究活動

輸入真菌症および真菌性食中毒への対策は国際的にも喫緊のグローバルな課題の一つです。このため国際活動は不可欠です。本センターではこれまで地球規模課題対応国際科学強力(SATREPS)に積極的に参加して、ブラジルにおける真菌症診断の技術強力で大きな成果をあげました。また長崎大学熱帯医学研究拠点共同研究をはじめとする真菌症における国際協力活動を行っています。

技術講習会

病原微生物の研究では、初心者に対して病原体に対する基礎知識を与え、また正しい実験手技を習熟させることは、研究のみならず、バイオハザード・バイオセキュリティーの観点でも不可欠です。しかしながら、大学では病原微生物の教育者を確保することが次第に困難になり、最新技術と基本的な知識を次世代へ継承するシステムが崩壊しつつあります。このような状況で、本センターでは真菌医学分野の後継者を育成するとともに、国公立の医療・検査機関における病原真菌の取り扱い、及び先端技術を普及させるため、病原真菌講習会を定期的に開催してきました。受講生の累計は、2013年で300名近くになりました。また千葉大学および学外から多くの大学院生、研究生を受け入れ、教員が研究の現場で研究指導を直接行っています。また外部より研究者を招きセミナーを開催しています。

市民

本センターのミッションを社会還元する目的の一つに、市民講座、公開フォーラム等を通じて、病原真菌や真菌感染症等に関する知識を広める活動を行っています。今後も、病原真菌、病原放線菌等を含め、感染症一般に関連する様々な問題を取り上げ、地域住民及び全国の市民からの要望に応える活動・啓蒙を積極的に行います。