千葉大学真菌医学研究センターは、1946年設立された千葉医科大学附属腐敗研究所を源とし、本年で71年目を迎えます。これまで幾度かの改組を経て、1997年全国共同利用施設として「真菌医学研究センター」へ改称し今日に至ります。その間、我が国唯一の病原真菌と真菌感染症の総合研究拠点として、文科省より共同利用・共同研究拠点「真菌感染症研究拠点」及びナショナルバイオリソースプロジェクト「病原微生物」中核拠点の認定を受け、基盤研究、臨床研究、共同研究、人材育成を主たる目的として活動してまいりました。
我が国では超高齢社会の到来により、癌や高度医療に伴う日和見感染症に加え、生活習慣病や呼吸器病の増大とそれに伴う難治性真菌症も増加し、近年真菌感染症の脅威は社会的にも大きくクローズアップされています。また、多剤耐性細菌のグローバルな増加と拡散は依然大きな脅威となっていますが、この状況は真菌においても深刻な問題となっています。さらに経済のグローバリゼーションと国際旅客数の増加により、高度病原真菌をはじめとするさまざまな高度病原微生物による輸入感染症の脅威にも曝されています。このような状況を踏まえ、本センターでは、これまでの基礎研究活動に加えて、臨床との連携、研究の国際化を推進しています。2014年から附属病院において我が国初の真菌症専門外来を開設し、また2015年から小児感染症の臨床研究チームを迎え臨床感染症研究体制を強化してきました。昨年は、AMEDの地球規模課題対応国際科学技術協力プログラム(SATREPS)に採択され、ブラジルのカンピーナス大学と共同研究を実施しています。
センターでは、基礎研究力の強化、異分野との融合、産業界との連携にも力を入れています。そのため、千葉大学の他部局、全国の大学・研究機関、海外の大学・研究機関、民間企業との共同研究を積極的に推進しています。例えば、昨年本センター教員を中心に、千葉大学グローバルプロミネント研究基幹・リーディング研究育成プログラムに採択され、本プログラムでは、真菌を含めた微生物叢と宿主免疫の相互作用の研究を中心に、網羅的真菌ゲノム解析、腸内微生物叢解析、病原微生物トランスクリプトーム・メタボローム解析等を開始しました。また、新規抗真菌薬の標的とシーズ化合物の探索研究も推進しています。昨年よりオープンイノベーションリサーチラボを開設し、企業との連携を通じて創薬開発を目指しています。今後は、真菌感染症に限らず、本センターの基礎系および臨床系教員との企業からの共同研究のご提案をお待ちしています。これら多様な共同研究を通じて、大学はもとより企業の次世代研究者の育成にも貢献したいと思います。
本センターは、学術研究の動向に柔軟に対応しつつ、今後も我が国の病原真菌、感染症、免疫の分野で先導的な役割を果す所存でおります。