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ウイルス感染症に合併する内臓真菌症の新たな脅威

インドを中心にCOVID-19に合併するムーコル症が急増していることはすでに本センターコラム記事で紹介させて頂きました。

一般的に、内臓真菌症は大きな病気を持っていない人がかかることはほとんどありません。例えば、臓器移植後や骨髄移植後、拒否反応を抑えるために免疫抑制薬が使われている患者さんや、何らかの原因で白血球の数が低下してしまっている患者さんは、全身的な免疫低下(微生物等に対する抵抗力の低下)が起きていますので、真菌を含めた微生物の感染を受け易い状態になっています(易感染性患者)。医療の高度化により、様々な難病が治療可能となってきていますが、その治療のために必要な薬剤(免疫抑制薬、分子標的薬など)が感染症等の別のリスクを生む可能性があることを忘れてはなりません。

一方で、いわゆる健常者がウイルスに感染し、内臓真菌症を合併してしまうこともあります。以前からよく知られているものとして、重症のインフルエンザウイルス感染症に伴う肺アスペルギルス症(Influenza Associated Pulmonary Aspergillosis, IAPA)があります。

アスペルギルスは、内臓、特に肺に感染を起こす代表的な真菌で、先に述べたような移植を受けた患者さんなどでは特に注意しなければならない病原体です。実は、COVID-19にもアスペルギルス症が多く合併することが明らかとなっています(COVID-19 Associated Pulmonary Aspergillosis, CAPA)。IAPA自体はすでに1970年代の終わりごろから世界各地で報告されていましたが、CAPAが大きな話題となることで図らずも再び脚光を浴びることになりました(Costantini C, et al. Vaccines 2020他70論文)。IAPAとCAPAとは極めて類似している部分が多いのですが、最近の研究では、お互いに異なる特徴があるのではないかと考えられてきています。我が国でも変異型コロナウイルスの感染拡大の脅威とポストコロナを見据えて、今後のさらなる調査の継続が必要です。

インフルエンザやCOVID-19等のウイルス感染症に肺アスペルギルス症が合併してしまうメカニズムについてはまだ不明な点も多いですが、肺の中の気道上皮等がウイルスにより強いダメージを受け、その結果普段肺を防御している気道上皮のバリア機構が破綻して、アスペルギルスが侵入してしまうのではないかと考えられています。

今後も新たなウイルス感染症の出現が確実視されている今、千葉大学真菌医学研究センターは国内外の医療機関・研究機関と連携して真菌症の研究・診療にあたっています。

(2021.8.17掲載)