後藤(Goto) PI
腸管をはじめとするヒトの粘膜組織には無数の微生物が常在しています。特に腸管内には、多くの細菌や真菌、ウイルス、寄生虫などが常在し、宿主に対し免疫細胞の分化・増殖の誘導など様々な作用を及ぼしています。宿主とこれら腸内微生物との共生の仕組みは生物学的に大変興味深いだけでなく、この共生関係が崩れると、様々な感染症や炎症性腸疾患、アレルギー疾患、肥満や糖尿病をはじめとする代謝疾患、大腸ガンなど、実に様々な疾患の発症の要因となる事がこれまでの研究から明らかになっています。一方で、病原体が感染すると免疫細胞は速やかにこれらを排除します。この、腸内微生物との「共生」と病原性微生物の「排除」がどのように成立しているのか、多くの謎に包まれています。
また、腸内に常在する細菌(腸内細菌)は、主に1. 病原性微生物の腸管定着・感染の阻害、2. 宿主免疫システムの誘導、という重要な役割を果たしています。当研究室は、これまでに腸内細菌と宿主免疫システムが協調的に相互作用しながら、病原体の感染に対する防御基盤を形成し、第一線の防御バリアとして機能していることを見出しました。現在、当研究室では、宿主の健康の鍵となる腸内細菌との「共生」と病原性微生物の「排除」のメカニズム解明を通し、下記のような研究テーマを設定して、日々研究に取り組んでいます。
- 病原性微生物の腸管定着・感染を阻害する腸内細菌、腸内細菌由来代謝産物の同定と、腸内細菌を用いた新規感染治療戦略の確立。
- 腸内細菌・真菌が司る病態誘導性もしくは恒常性Th17細胞、3型自然リンパ球の分化機構ならびに機能解明。
- 腸内細菌叢の戦略的コントロールによる非モデル病原性微生物感染マウスの確立と腸管感染・宿主免疫機序の解明。
- 腸内細菌・腸内細菌由来代謝産物によるワクチン効果の最適化戦略と腸内細菌を用いたナチュラルワクチン戦略の確立。
後藤 義幸 |
准教授 |
長谷川 さや香 |
技術補佐員 |
平山 南 |
技術補佐員 |
- Kamioka M, Goto Y, et al. Proc Natl Acad Sci U S A.119: e2115230119, 2022
- Goto Y. Cell Host Microbe. 30: 3-5, 2022
- Nagao-Kitamoto H, et al. Nat Med. 26: 608-617, 2020
- Fujimoto K, et al. Gastroenterology. 157: 1530-1543.e4, 2019
- Ichikawa T, et al. Nat Immunol. 20: 1469-1480, 2019
- Goto Y. Front Immunol. 10: 2057, 2019
- Matsuo K, et al. Microbiol Immunol. 63:155-163, 2019
- Goto Y, et al. Nat Immunol, 17: 1244-1251, 2016.
- Goto Y, et al. Scientific Reports, 5: 15918, 2015.
- Goto Y, et al. Science, 345: 1254009, 2014.
- Goto Y, et al. Immunity, 40: 594-607, 2014.
- Goto Y, Kiyono H. Immunol Rev ; 245: 147-163, 2012.
http://www.pf.chiba-u.ac.jp/project_symbiosis/